「お前達、何をしているか?」

 イフリートの声が至近距離から聞こえてきて、あたしとジンはバッと唇を離し、抱きしめ合っていた腕を解いた。

「口と口を合わせていては、会話は不可能なり」

 怪訝そうな顔で、あたし達を見比べているイフリート。

 あ、そういえばこの人もいたんだっけ。ここに。

 お……思いっきり人前でキスに没頭しまくってしまった……。

 照れ隠しのように咳払いしたジンが、ノームに話しかける。

「ノームも無事なようだな。良かったな」

「……あ、は、はい! ありがとうございます!」

 イフリートの手の平の上で、うっとりと指に頬ずりしていたノームが、ハッと気付いたように返事をした。

「我も安堵した。ノームの無事は非常に嬉しい」

「イフリート……」

 ノームに向かって、イフリートはとても優しく微笑んでいる。

 それを見上げるノームの、何とも恥ずかし気で嬉しそうな、形容し難い表情。

 ……あぁ、そうか。
 ノームはイフリートに恋してるんだ。

 イフリートはノームに対して、どうやら『大切な妹』みたいな感情を持ってるみたいだけど、ノームの方は明らかに恋愛感情を持っている。

 男らしくて精悍で、いつも自分を気にかけてくれるイフリートに、恋をしてしまったんだわ。

 少女の初恋、かな?

 きっと今、あの小さな胸は、初めて知る感情に翻弄されているんだろう。

 身を絞るような切なさと、大輪の花が開花するような喜びに。