放置しないって?

 なに? あたしの立場って、これからどうにかなっちゃうの?

「ご自分が寵愛を与えた女性には、きっと相応の、正式な地位をお与えになるでしょう。正妃か、非常に高位の貴族の名か」

「……はい?」

「つまり雫様は、この国を担う重要な存在になられるのです」

「……」

「今はまだ、ただの御手付きですが」

「だから、手も足も付いて無いってば!」

 あたしは顔から血の気が引いた。

 じょ、冗談でしょ!? てか、冗談じゃないわよそんな事!

 あたしは、この国の正妃はもちろん貴族になるつもりなんて、全然無いわ!

 あたしはジンが好きなのよ!

 それに、どうなるか分からないけれど、元の世界に帰る希望も捨ててはいない!

 正妃や貴族なんかにされちゃったら、もう身動きがとれなくなる!

「あたし困るわそんな事!」

「ご心配には及びませんよ。煩雑な手続き等は、万事こちらで取り計らいますから」

「そういう意味じゃなくて!」

「さあみんな、雫様にはもうお休みいただく事にしましょう」

「はい。そうですね」

「何と言っても雫様は、この国の大事なお方になる身ですから」

 ……やっぱり聞いてない~!!

 侍女達は深々と腰を曲げて、ものすごく丁寧なお辞儀をした。

 そして神妙な態度と表情で、粛々と部屋から出て行ってしまう。

 言い分全てを虚しく無視されて、呆然とひとり部屋にたたずむあたし……。