「でも、女の趣味は理解しにくいかも」

「ほら、ヴァニス様って、珍獣や珍品とか珍しいものがお好きだから」

「これが好みなら、逆にあたし達にチャンスは無い事になるわよ?」

「そうねえ、残念ねぇ」

 ……おいこら! 珍獣や珍品って何よ!

 あたしは絶滅危惧種の希少動物か!?

 いくら東洋系が見慣れないからって、あんまりな言い草でしょ!?

 こいつら自分の失言加減に全然気付いて無いわね!?

「これお前達、お客人に対して失礼な物言いをするんじゃないよ」

 年かさの侍女が、他の侍女達を嗜める。

 みんなハッとしたように縮こまり、あたしに向かって慌てて詫びた。

「も、申し訳ありません雫様!」

「雫様は、とても気さくな雰囲気をお持ちのお方なもので、つい」

「なにとぞ失礼をお許し下さい!」

 ひたすら恐縮されて、今度はこっちが恐縮してしまう。

 まぁ、気さくな雰囲気って、言い換えれば『庶民丸出し』って事だから。

 事実、庶民だし。

 あたしの方からして、こんな口調や態度だから、つい気を抜いてしまうんだろう。

「それでいいのよ。あたしも全然気にして無いし」

「そんなわけにはいきませんよ」

 年かさの侍女が、また嗜める口調で話し出す。

「王のご寵愛を受けるとなれば、相応の処遇を受けてしかるべきですから」

「……相応の処遇?」

「分かりませんか? 正妃のいない今、雫様の立場は非常に重要なんですよ」

「?」

「今はまだ、ただの御手付きですが」

「いや、だから、付いて無いってさっきから何度も……」

「ヴァニス王様は、情の深いお方です。雫様をこのまま放置などなさらないでしょう」