銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 と、聞くほどあたしも子どもじゃない。

 そんなの、聞かなくてもよく分かる。

 だから余計に焦ってパニックになってしまうのよ!

 ちょっとどうするこの展開!

 深刻な話題の最中だったから油断した! 完全に乗っかられてしまった!

 体重を乗せられて、もう身動き不能~!

 身じろぎしようとしても、どうにかヒジから先がジタバタ動く程度。

 足先が虚しくシーツを掻く。

 そういや、こっちの問題も完全にすれ違ってたんだ!

 世界と種族の存亡より、こっちが優先なの!? 明らかに順番間違ってない!?

 と、とりあえずこっちの問題も丸め込まないと! それも早急に!

「今は世界の問題の方を優先すべき時だわ!」

「それは、もはや解決済みだ」

「あたしの意見は完全無視!?」

「お前の望みならば叶えたいとは思う」

「ほんと!?」

「うむ。なんといってもお前は、余のさだめの女であるからな」

「定まって無いわよ! まだ全然!」

 ヴァニスの両目に、今まで見た事もないような艶が宿っている。

 その色っぽさに、あたしはジリジリ痺れるような焦燥感を感じて息を呑んだ。

 どうしよう、本当に待ったなしだ。どうやってこの場を切り抜けよう!?

「世界の転換期に、計ったように異世界から来訪し、余の心を奪った乙女よ……」

 せっぱ詰ったあたしの心情を知ってか知らずか、ヴァニスの声に熱がこもる。

「余は知った。お前こそが、人身御供の運命から解き放たれた最初の王族を産む女なのだ」

 う……産むって……!

 なんか今このシーンで聞くと、すっごい生々しい単語なんですけどそれ!