銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「ヴァニス……」

「お前の考えを笑いはせぬ。だが、現実味の薄い話だと言わざるをえまい。舵のあやふやな船に、民は乗せられぬよ」

 あたしの熱意ひとつで、ヴァニスの考えを変えるのは難しいとは思っていたけど、こうもキッパリ拒否されるとさすがに堪える。

 ひょっとしたら、あたしが説得すれば考え直してくれるんじゃないかしらって、思ってしまった。

 ……甘いわよね。それに姑息だわ。

 彼の気持ちは受け入れられないのに、利用だけしようとするなんて。

 ちょっと自己嫌悪に陥って、でもすぐまた浮上する。

 落ち込むのは後回しだわ。今はとにかく説得しないと。

 でもヴァニスって、若いわりに結構あたま固そうだから大変そうね。

 矢継ぎ早に頼み込んで、うやむやのうちになんとか丸め込めないかしら。

「どうか考え直してヴァニス。お願いよ。大事なことなの」

「事の重大性は余も理解しているつもりだ。だが……」

「だが?」

「今は、こちらの方が余にとって非常に重要なのだ」

 ……。

 ……あ、あの……?

「ヴァニス?」

「なんだ?」

「なに、してるの?」

「おまえの寝具を剥ぎ取っている」

「……」

「そして、余もベッドに上がりこみ……」

「……」

「こうして、お前の体の上に乗り上げている」

 ……。

 どうして、そんなことを?