銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「それにあたしは知っている。あなたが、不可能に挑んだ男だという事実を」

 そしてそれは、人間だけじゃない。

 誰もが諦めていた状況から、たったひとりで立ち上がったジン。

 神の立場でありながら、人間の世界に飛び込んだモネグロス。

 いる。いるんだ。

 現状を引っくり返してやれ!って考えてるのは、あたしひとりじゃない。

 それは道行く先の希望と言えない?

 今はバラバラで勝手な方向を向いているけれど、何もしないで諦めたくない気持ちを、ひとつ方向へ導けたら……。

 世界は、変わるかもしれない。

「不可能かもしれないわ。でもそうじゃないかもしれないんだから、もうひと頑張りしてみない? 不可能を引っくり返してみない?」

あたしの髪を撫でているヴァニスの大きな手を、あたしはギュッと掴んで熱心に言い募った。

 前に進んでみましょう、ヴァニス。

 ひとりじゃないわ。ジンもモネグロスも一緒に進んでくれるはずよ。

 きっとそこに道はある。そして道行く先に希望の光が……。

「余の両肩には、歴代の王家の望みと、全国民の命運が懸かっている」

 あたしの言葉をヴァニスは遮った。

 夢中で話していたあたしの気付かぬうちに、ヴァニスの表情は一変している。

 ただの青年から、国王の表情に。

「不確実な賭けに乗るわけには、絶対にいかぬ。余は人間の王である」