銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「違うわ」

 あたしは即座に否定した。

「あたしはみんなの味方であって、誰の敵でもないの。どちらかの側だとか、そういうんじゃなくて……」

「誰の敵にもならずに?」

「そうよ。そういう視点で考える必要が、現状では求められて……」

「雫よ、それは不可能だ」

「え?」

 ヴァニスは、困ったような表情をした。

 ……いいえ、それは、宥めるような表情だった。

 大人が、幼い無知な子どもに言い聞かせ、諌めるような。

「誰の敵にもならず、全ての味方で生きていくなど、できぬ。やらぬ、ではなく『できぬ』のだ」

 あたしは何か言い返そうとして、言葉に詰まった。

 分かっている。ヴァニスに言われるまでもなく。