銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「だから、あなたの気持ちは受け入れられないわ」

「雫」

「ごめんなさい。もっと早く言うべきだったのに」

「雫、無駄だ」

「でも本当にありがと……え?」

 ……無駄? 
 無駄って何が?

 変わらず幸せそうな表情のままのヴァニスを、あたしは首を傾げながら見上げた。

「たとえお前に懸想する相手がいようと、それはもはや関係なかろう」

「……」

 いや、大ありでしょう?

 というより、むしろそれが最重要課題でしょう?

「なぜ関係ないの?」

「お前は今、余と口付けを交わした」

「え、えぇ、それは……」

「乙女が初めての接吻を交わす。それすなわち、永久の愛を受け入れ、そして捧げる事にほかならない」

「…………え?」

「お前は今まさに、余と永遠の契りを交わしたのだ」

「ええぇーーっ!?」

 永遠の契りぃ!?

 なに!? こっちじゃキスひとつに、そこまで重要な意味があるわけ!?

 結婚式での誓いのキスと同ランクなの!? 今のが!?

「ま、待ってヴァニス! ちょっと文化の壁の問題が……!」

「雫。異世界から舞い降りた乙女よ」

「そう異世界! それよ! そこが問題で!」

「やはりお前が、余のさだめの女であったか」