銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「神もなにも、そもそも余は人間だぞ?」

「それは、そうなんだけど……」

「以前に話したはずだ。神だ精霊だからといって、特別でも偉大でもない。我らは等しいのだ。だから神達に対して卑屈になる必要はない」

「ええ、確かにそう言ってたわね」

「それに確立も何も、すでに余は人間の王である」

 あたしの目を見てハッキリとヴァニスは言い切った。

 まったく、それが偽りの無い本心なんだろう。この真っ直ぐな目を見ればすぐ分かる。

 その本心が……神や精霊達には曲がって伝わってしまったんだ。

 トラブルの原因なんて、大抵みんなそうだ。

『本意が相手に正確に伝わらない』

 まさにこれに尽きる。

 相手の意見を耳から聞いた時点で、その意見には自分の主観が混じってしまう。

 それはどうしても避けられない。自分と相手が、別々の生き物である限り。

 神は別に特別じゃないとか、偉大なわけじゃないとか、人間はまったく卑屈にならなくていいとか。

 言われた神達の側からすれば、『王は神より偉大で世界で一番だ』宣言に聞こえてしまったんだ。

 でも、それを早とちりとは責められないと思う。無理もない事だわ。

 ちょっと次元の低すぎる例えかもしれないけど、入社して三ヶ月程度の、やっと仕事に慣れてきた新人が、

『オレ達の実力を先輩達に見せつけてやろうぜ!』

 とかって、うそぶいてるを聞いちゃった時の心境みたいなもの?

 それ以来、やる事なす事、その新人君の行動をつい色眼鏡で見ちゃうみたいな。

 それってあまりにも普通に、良くある事だわ。