銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 人間の王は、あたしの目の前でゆっくりと両手を組み、何か奥深いものに思いを馳せるような表情になった。

 あちこちに染みの付いたエプロンは、もう……そんなに可笑しくは見えなかった。

「それは事実だ。神を消滅させるために必要だった。それについて、余は弁解はせぬ」

「弁解が聞きたいんじゃないの。あたしは、ヴァニスの気持ちが聞きたいのよ」

 ヴァニスは、言い訳がましい事を言いたくはないんだろう。

 それは分かる気がする。言い訳なんて、結局は誰かの許しを請うような行為だ。

 国王として、それは決してやってはいけない事なんだろう。

 ヴァニス本人の性格からしても、潔しとしないだろうし。

「余の気持ちを聞いてどうする? 聞いたところで事実は何も変わらぬ」

「事実と真実は、必ずしも同一じゃないって知ったのよ。あたし」

「……」

「あたしは知らなければならないの。知らないってね、恐ろしい事なのよ。真っ暗闇の中で、明かりひとつ持たずには進めない。一歩も動けないの」

 だから教えて欲しい。聞かせて欲しい。話して欲しい。

 ヴァニスの気持ちを。心の中を。

 それを言い訳だなんて責めたりしない。軽蔑もしないから。

「ねぇ、まず最初に聞かせてくれない? あなたは自分を、唯一無二な存在だと公言したの?」

「唯一無二? それはそうだろう。命は皆等しく、唯一無二の存在だ」

「いや、そういう意味じゃなくて。自分は神より偉大な存在だと思ったのか? ってことよ」

「……?」

「つまり、自分がこの世界で一等賞で、まさに神のような存在だと公言したの? それを利用して王の座を確立しようとしたの?」

「なんだそれは?」

 ヴァニスは怪訝そうな顔になった。