銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 な……なにそれなに!?

『会いたい一心』って、そりゃ事実関係だけでいえば、確かにその通りなんだけど!

 なんかニュアンスが微妙に、隠し味的に変化してない!?

「あ、いや、それは……」

「それほどまでに、余に会いたかったか。待たせて済まなかった。余自身も雫に会いたかったとはいえ、王としての執務が優先なのだ」

「あ……の……?」

「だが、やっとこうして会えた。心配したのだぞ? 雫とこうして再び話せる時を、余も切望していた」

 ヴァニスの表情は真剣だった。

 別にからかっている様子でも、ふざけている様子でもない。

 バランスの良い彫りの深い顔立ちに真剣に見つめられて、あたしは居心地が悪くなってしまう。

 べ、別に、深い意味は無いのよね?

 二日も目が覚めなかったあたしを心配してくれていた。再び話せる日を待っていてくれた。

 だから目覚めた事を喜んでくれて、無事を確認したかった。

 ……ただ、そういう事よね?

 そんなの普通の事よ。あたしだって友人知人が意識不明だったら心配するわ。

 回復したなら嬉しいし、当然早く会いたいと思うもの。

 当たり前の事。特別でもなんでもない。なんでもないのよ。

 あたしは心の中でそう呟いて、ヴァニスの黒い瞳から目を逸らした。

「そんなに心配してくれるなんて思わなかったわ」

「うむ。余も自分で驚いている。自分自身の強い感情の動きに」

「強い感情?」

「この二日間で、余は今まで知らなかった感情を知ったのだ」