目が覚めた時、あたしはベッドの上にいた。

 しばらくの間、何がどうしてどうなって、何で自分がベッドに横になっているのか、まるで認識不能だった。

 あうぅ、なぜか全身がギシギシ痛む。これじゃ起き上がれないわ。

 しかも部屋に控えていた侍女が、あたしが目覚めたのに気付いて大騒ぎし出すし。

 キンキン声で叫ばないでよぉ。頭に響く~~……。

 こめかみを指先でグリグリしながら顔を顰めていると、マティルダちゃんが息せき切って部屋に飛び込んできた。

「雫さま! やっと目が覚めたのね!? マティルダの事がちゃんと分かる!?」

 さっきの侍女より、さらに1オクターブ上回るキンキン声に、あたしはさらに顔を顰めた。

 でもそんな事はお構い無しに、切羽詰まったマティルダちゃんの叫び声が響く。

「雫さま! マティルダよ!? マティルダ・ファナ・ル・レオノーラ……」

「わ、分かってる。分かってるわマティルダちゃん。だからそんな、わざわざ長ったらしい王家の正式名称を詠唱しなくてもいいから」

 マティルダちゃんはやっと安心したのか、大きく息を吐いて胸を撫で下ろした。

「だって雫さま、もう二日間も眠り続けていたんですもの」

「……は!? 二日間眠り続け!? なんでそんな……あ!」

 あたしの記憶は一気に覚醒した。

 爆発。疾風。降り注ぐ瓦礫の山。

 逃げ惑う人々の悲鳴と、恐怖に戦慄く姿が、次々と頭の中で再生される。

「ジンは!? あの女の子は!?」

 勢い良く上体を起こした途端、ぐらぁっと眩暈を感じて、そのままバタリと仰向けに倒れてしまった。