銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 全身の細胞が一瞬にして爆発する。

 髪が逆立つような身震いと、血潮の逆流。頭の中が真っ白になって、何もかも分からなくなって……。

 直後に、あたしの中の水の力が暴発した。

 凄まじい轟音と共に背後の噴水が大爆発して、地下から水が噴出する。

 天に向かって唸り出る膨大な水が、まるで巨大間欠泉のような激しい水流となり、情け容赦なく風の精霊達に牙を向く。

 精霊達は、ひとたまりもなく吹き飛ばされた。

 水の勢いのあおりを食らって、ヴァニスの体も吹き飛ばされる。

 それを横目で見ながら、あたしはバクバクと波打つ鼓動を必死に両手で押さえていた。

 あぁ、あぁぁ……。


 人間とか、神とか、精霊とか。

 どちら側の存在か、とか。

 生存競争とか、勝者とか、敗者とか。

 なにが正義だとか。

 なにが罪で、どれが間違いだとか。


 分からない。分からない。

 あたしは、何も分からない。


 あたしの全身を冷や汗が覆い、激しい動悸は止まらない。

 風の精霊達に襲い掛かる水の勢いも、止まらなかった。

 空中を逃げ惑う精霊達に、水はまるで意思を持つかのように攻撃を続けている。

 あれは恐らく、あたしの意思。

 ジンを救いたい一心が、無意識に彼らを攻撃しているんだわ。

 ごめんなさい、止められない。ジンを助けたい気持ちを止める事なんてできないのよ!

 だからあんた達、自分で逃げて! 頼むからうまく逃げて!