銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしの頬に、涙が一筋流れた。

 どちらを選ぶ? 人間か精霊達の側かを?

 それは、その選択は、人間と精霊ふたつが混在しているあたしにとって、あまりにも惨い選択。

 そんなの選べない! 選べないわよ!

「風の精霊達よ、やれ」

 答えられないあたしに構わず、ヴァニスはそう言った。

 それに応じて風の精霊達の手の平に、空気の渦巻く様がはっきり見てとれる。

 なに……する気なの!?

「止めを刺せ」

 ヴァニスの淡々とした命令に、精霊達は皆、目をギュッと閉じて歯を食いしばる。

 ちょ……ちょっと待って!
 やめてよ! ダメよそんな!
 待って! そんな事しないで!

「嫌! 嫌! 嫌よやめて!」

 あたしはヴァニスと風の精霊達に、拝み倒さんばかりに必死に頼み込んだ。

「あたし何でもするから! なんでも言う事聞くから! 土下座でも裸踊りでも、何でも何でも言う通りにするから! だからお願い! ジンを殺さないで!」

 どうか殺さないで! 殺さないで! 殺さないで!

 お願いお願いお願いお願いお願……

「やれ」

「……!!」

 あたしはヒィッと息を呑む。

 すぅっと顔から血の気が引いた。

 ジンに狙いを定めた風の精霊達の全身が、大きくしなる。

「……いやああぁぁぁ―――!!」