―― ゴオォォォッ!!

 凄まじい疾風がヴァニスの足元から、天に向かって湧き起こった。

 その突風に煽られ、空中のジンの体が瓦礫もろとも木の葉のように吹き飛ばされる。

 ……あ、あれは!

 見開かれたあたしの目に、銀色の精霊達が映った。

 複数の精霊達が、空中で懸命に体勢を整えようとしているジンを取り囲んでいる。

 あれは、風の精霊達!? ジンの仲間なの!?

 きっと精霊の長に命じられて、ヴァニスを護衛に来たんだわ!

 ……そんなの酷い! よりによって風の精霊を……同じ種族の仲間同士を敵対させるなんて!

 ジンは驚愕したように仲間達を見回し、そして必死に話しかけている。

 ここからじゃ遠くて何も聞こえないけれど、どうやら、この場を引くように説得しているらしい。

 二言三言、彼らは言葉を交わし、そしてジンは悔しげに唇を噛んだ。

 仲間の風の精霊達は苦悩するような、哀れむような表情でジンを見ている。

 その様子を見ていたヴァニスが、風の精霊達に向かって命令した。

「……やれ」

 でも風の精霊達は躊躇し、お互い目配せして意思を確認しあっている。

 ジンは黙って、仲間達のそんな様子を見ていた。

「何をしている! 早くしろ!」

 ヴァニスの叱責を浴び、風の精霊達はついに決心したようだった。

 精霊達の銀の髪が風に煽られ巻き上がり、キィン!と鼓膜が切れるような音が響く。

 すると仲間に囲まれたジンの顔が苦痛に歪み、全身が震え始めた。

 ジン!? どうしたの!? 何が起こってるの!?

「あんた達やめて! やめなさい! ジンに何をしているのよ!?」