「うわあぁぁん!!」

 阿鼻叫喚の中、子どもの泣き声が聞こえた。

 見れば少女が地べたにペタンと座り込み、腰を抜かしたように泣き喚いている。

 ……さっきの女の子だわ! あたしに花束をくれた女の子!

「おとーさん! おかーさん! どこ――!?」

 ノドも千切れんばかりの声で泣き叫ぶその子の周りには、おびただしい血と、酷い遺体が。

 火が燃え移り、無残に焼けた遺体も……。

 あたしは無我夢中で人々を掻き分け、女の子の元へ駆け寄ろうとした。

―― ドオンッ!

 空から巨大な瓦礫が落下してきて、あたしのすぐ前方の地面に激突する。

 耳を覆うような派手な音と共に、粉砕した瓦礫を浴びてあたしは引っくり返った。

「うぅ……!」

 痛みを堪え、唸りながら上体を起こすと、周囲には血だらけの遺体が破片の合い間に転がっていた。

 あの子……あの子は無事!?

「うわあぁぁん! うわあぁー!」

 女の子は地面に這いつくばり、両手で頭を抱えて泣き叫んでいる。

 あたしは立ち上がろうとして、足に鋭い痛みを覚えて地面にバタリと倒れてしまった。

 見ると、ふくらはぎから血がダラダラ垂れている。さっきの瓦礫で切ったんだ。

 ヒィヒィひきつけの発作のような泣き声を上げ、ひとりでガタガタ震えている女の子に向かって、あたしは懸命に手を伸ばす。

 ……とても届かない。呼んでも、叫んでも、周囲の騒ぎに紛れて届かない!

「ジン!!」

 あなたは、あたしを助けに来てくれた。

 あなたにとって人間は、全てにおいて例外なく憎むべき存在でしょう。

 神を裏切り、眷族を消滅させ、精霊達を捕縛し苦しめる。

 世界を破滅に導く元凶から、あなたはあたしを救い出そうと懸命に戦ってくれている。

 分かってる。良く分かってる。

 でも……でも……

 でも!

 お願いだからやめてぇ!