「ヴァニス！　なんとかして！　このままじゃ二次災害になる！　大勢の人が死ぬ！」

　ヴァニスは宙を見上げ、爆発の連続する軒並みの上を睨みつけていた。

　その視線の先を辿って、あたしは激しい衝撃を受ける。

「ジン！？」

　赤い炎と黒い煙の中に、ジンが立っていた。

　黒い風に巻き上げられた銀の髪が逆巻き、銀の険しい視線はまるで刃を投げつけるかのようだ。

「狂王！」

　憎々しげな語気の鋭さが、真っ直ぐヴァニスを貫く。

「新世界、だと！？　お前の好き勝手にはさせない！」

　ジンの叫びに呼応するように、ゴォッと炎が舞い上がった。

　まさかこの爆発の正体は……

「ジン！　イフリート！　モネグロス！　あなた達が！？」

「雫、待ってろ！　いま助ける！」

　ジンの体がふわりと宙に浮き、こちらを目掛けて勢い良く滑空してきた。

　その方向から、炎や煙、数知れない瓦礫の塊が弾丸のように飛来してきて、広場の上空から人々に向かって無差別に襲い掛かる。

「ぎゃああぁ！？」

「うわああ！！」

　ついさっきまで、笑顔であたしに話しかけていた人達が、悲鳴や怒声をあげながら倒れ、降る瓦礫の中を入り乱れて懸命に逃げ惑う。

　あたしは目を見開いて絶句しながら、周囲を見渡した。