―― ドオンッ!!

 その時、突然爆発音が響いた。

 一瞬、ヴァニスを讃える花火かと思ったけれど違うらしい。

 人々が動揺し、軽い悲鳴を上げてざわつき始める。

―― ドオン! ドオン!

 続けざまに何度も爆発音が響き渡り、悲鳴は本格的になって、皆が慌てだした。

「みんな、見ろ! 家が燃えているぞ!」

 ひときわ大きな叫び声に、皆が驚愕した。

 広場の向こうの軒並みが次々と爆発している。

 赤い炎が燃え、黒い煙が立ち昇り、風が煙と炎を運んで、どんどん飛び火して引火していく!

 大変だわ!!

「ああ! オレの家が!」

「私の家も!」

「やっと建て直したばかりの家が!」

 何人かが爆発の場所に向かって一目散に駆け出した。

「だ、だめよ! 行っちゃだめ! 爆発の巻き添えになってしまう! 近づいてはだめよ!」

 懸命に訴えるあたしに、人々は血相変えて答える。

「家にはオレの親父がいるんだ!」

「私の赤ちゃんがあ!」

「あそこには家族がいるんです!!」

 止めても、誰も聞く耳持たなかった。

 ざわつきと混乱が広がり、広場は雑然として落ち着きを失う。

 爆発が広がるにつれて、走り出す人がどんどん増えていく。

「だめよ! 気持ちは分かるけど行っちゃだめよ――!」

 あたしの声は、爆発音と悲鳴に掻き消されてしまった。

 いったいどうしてこんな!? ガス爆発でも起こったの!?