銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 アグアさんの居場所も、何とかして探し出したい。

 ノームが無事な事も伝えたい。

 ヴァニスが、意外にも国民の支持を得ている事実も。

 謎の石柱の件も、伝えたい事が山ほどあるのに・・・。


 石柱……。

 あの時、もしかしたら死ぬかもしれないと思った時、あたしはジンの事しか頭に浮かばなかった。

 ジンの微笑み、ジンの声、ジンの指先。

 ジンの全てが、強烈なまでにあたしの心を支配していた。

 ただ『ジンにもう一度会いたい』とだけ、一心に祈った。

 命が危ぶまれた時、ジンを求める想いだけが、あたしの全てだった。

 あたしは……明らかにジンに惹かれている事を思い知る。

 あたしは再び恋に落ちたんだ。

 この異世界で。

 その事実が嬉しいのか悲しいのか、ひたすら胸は疼いて痛み続ける。

 あたしの心は彼に傾いている。

 異世界の住人、銀色の風の精霊に。

 住む世界の違う異種族の存在。

 この世界も、あたしの未来も、どうなるのか定かでは無い。

 今も先も不安要素だらけ。なのにあたしの心臓は、強く押されるように苦しく焦がれてしまう。

 二度と出来ないと思っていた、恋をする喜びに……。

 星空の下、強く強く願う。

 ジン、あなたに会いたい。会いたい。

 会ってもう一度話がしたい。

 あなたの笑顔が見たい。触れ合いたいの。

 ジン、ジン、ジン……。

 涙がポロポロと頬を伝って零れ落ちた。あまりの切なさに、耐え切れない。

 思うさま啜り泣いていると、ふと……視線を感じた。

 見上げたあたしの涙に濡れた両目は、向かいのバルコニーに立ってあたしを見つめている、ヴァニスの姿を見つけた。