銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 なぜなの? 悪名高い暴君なのに。

 あんな非道な事をしておいて、なぜこんなに堂々としていられるの?

 なぜそんなに胸を張っていられるの?

 戸惑うあたしの遥か頭上を、白い小鳥がさえずりながら伸び伸びと飛んでいく。

「お前は、自分があの鳥よりも偉大だと思うか?」

「え?」

「鳥から見たら、我ら人間は特別に見えるだろう。自分達には生み出せない物を生み出し、成し得ない事を成す」

「……」

「まさに我らから見た『神』のごとし、だな」

「神の、ごとし? あたし達人間が?」

「今一度、問う。雫よ、お前は鳥よりも偉大で特別な存在か?」

「そ、それは……」

 ヴァニスは、逸らす事を許さない強い視線で真っ直ぐあたしを見つめながら、あたしの答えを待っている。

 あたしが、鳥よりも偉大かって?

 それは、そういう次元の問題じゃないでしょう?

 鳥は鳥だし、人間は人間よ。ただそれだけ。純粋にそれだけ。

 どっちが偉大でも上等でもないし、どっちが劣等でも下等でもないわよ。

「それぞれが同じ土壌に生きる、等しい存在に決まってるじゃないの」

「そうだ。等しい存在だ。我ら人間はそれを良く知っている。特別でも無く、偉大でもないのだ。それを決して忘れてはならない」

「……」

 それは、神と人間の関係を暗示しているの?