銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「結構です! このまま馬車に乗ってます!」

「……ふっ」

 必死に首を振って断固拒否するあたしを見て、ヴァニスが笑った。

 それを見た護衛役の兵士達が、揃って顔を見合わせている。

「もうすぐ目的地に着く。それまでの辛抱だ」

「目的地って?」

「ヴァニス王様、見えてまいりました」

「うむ。……見ろ。あれだ」

 あたしは前を向いた。

 広い広い草原には木一本、岩ひとつ見えない。

 そんな寒々しいほど殺風景な景色の中に、唐突に、三本の石柱が立っている。

 あの石柱、いったい何かしら? 遺跡っぽく見えるけど……。

 馬車はほどなくその場所に到着し、ヴァニスが馬車から降りて石柱に近づくのを見て、あたしも仕方なく後に続いた。

 ヴァニスの背丈よりも少し高い石柱は、太さもたいして無い。あたしでも両腕で抱えられる程度だ。

 ただ、色は真っ白で、野ざらしとは思えないほど綺麗だった。

 そんな三本の石柱が、三角の形になるよう置かれている。

 遮る物の何も無い、心細さを感じるほど広大な草原を渡る風が、髪を揺らした。

 ジンとは違う風に身をさらされながら、あたしは髪を押さえる。

「雫よ、ここは……」

 石柱を眺めるヴァニスの黒髪も風に揺れている。

 ここは?

「ここは、始祖の神の降り立った場所だ」