銀の精霊・森の狂王・時々、邪神


 牢屋って……

 悲惨だわ。すごく。


 あの後、あたしは兵士達に取り囲まれ、問答無用でこの牢へ押し込まれてしまった。

 小さな窓があるだけの暗い小部屋は、壁も床も、でこぼこゴツゴツした乱雑な石造り。

 板一枚の上に藁が薄く敷かれただけのベッドに、こうして力無く座り込んでいる。

 部屋の隅の四角い箱。あれ、たぶんトイレだわ。悪臭が漂ってる。

 最初のうちは、柵を揺すってギャーギャー喚く元気もあったけど、そのうちに疲れて声も出なくなった。

 だって喚いても叫んでも暴れても、人っ子一人現れない。

 目の前の頑丈な柵を見ていたら、どうしようもなく悲しくなってきた。

 檻の中に閉じ込められて、もうどれくらい時間が経ったろう。

 ノームとは強引に引き離されてしまったし。あの子、無事かしら。心細い思いしてないかしら。

 まさか自分が牢屋に入れられる日が来るなんて、夢にも思わなかった。

 自慢じゃないけど犯罪とは一切無縁で、清く正しく真っ当に生きてきたのに。

 ミジメで悲しくて心細くて不安で、目が潤んでくる。

 この先、いったいどうなるの? このままずっと牢にいなきゃならないの?

 囚われの身ってのが、こんなにも悲惨な状況だなんて。

 アグアさん、もうずっと幽閉されてるのよね。あたしが捕まってしまって、彼女はこれからどうなるのかしら。

 モネグロス、どんなに心配してることだろう。

 ジン……。ジンもきっと心配してる。

 ごめんなさい。約束したのに。きっと帰るって、あんなに繰り返し約束したのに。