銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「こ、これで形勢逆転よ! 狂王!」

 あたしは、とりあえずシラをきり通す事にした。

 ノリと勢いで、このままこの場を納められないかしら?

「あたしの世界に伝わる武道を侮ったら、あんた痛い目見るわよ!」

 強気! 強気よ!

 ほんとは武道なんて全然身につけて無いんだけど、でも嘘も方便! 

 この手のハッタリは、とにかく威勢の良さが勝敗のカギを握るんだから!

 目! 眼力で負けちゃだめなのよ!

 ノラ猫のケンカと一緒。最初の睨み合いで、勝負のほぼ8割が決まるのよ!

「そっちが剣を引けば、この場はあたしも引いてあげるわ!」

 ……だから引いて! ぜひともお願い!

「放せ」

「な、なんですって!?」

「手を放せ、と言っている」

「そんなこと言われて、はいそうですかと素直に放すとでも思うの!?」

「剣を引いて欲しいのではないのか? お前は」

「はあ!? な、なに!?」

「だから、お前の手が邪魔で、剣を鞘に収められないのだが」

 ……あ、そうか。
 剣を掴まれてたら、そりゃ収められないわ。

 で、でも放した途端に切り捨てられちゃうかもしれない!

「あんたなんか信用できないわ!」

「では引かぬが良いか?」

「引いてよ!」

「できるわけがなかろう」