銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「庇ってくれてありがとう、イフリート」

「良いのだ。ノームよ」

「イフリートって、いい名前ですねっ」

「ノームも、良き名と思慮する」

「うふふ、イフリート……」

「何か? ノームよ」

 ……。

 勝手にやって。

 なんだかバカップルみたいなその様子を、あたしとジンは苦笑しながら見ていた。


 そんな風に、あたし達は何日も寝食を共にする日々を過ごしている。

 ノームがあたしのために果物や野草を調達してくれて、イフリートが焚き火で野草を焼いてくれたり。

 歩き疲れたあたしとモネグロスを、ジンが心地良い風で癒してくれる。

 そしてみんな揃って、コテージで横になって休む日々。

 毎日、毎日、そんな風に過ごしながら、少しずつあたし達は目的地に近づいていく。

 時折……
 歩きながら視線を感じて振り向くと、そんな時は決まってジンがあたしを見つめている。

 目が合うと慌てて彼は視線を逸らして、素知らぬふりをきめこむんだけれど。

 でもそんな時は必ず、あたしの周りに素敵な風が吹いているのを感じて、あたしの胸は高鳴った。

 そして夜にもなれば、あたしとジンはふたりきり、焚き火の前に座っておしゃべりをする。

 夜がとっぷりと更けるまで、彼と話し込むのが日課になった。

「今日もよく歩いたな。疲れたろう?」

「平気よ。ジンの癒しの風のお陰で」

「本来なら、水の力の方が癒しの効果が強いんだがな」

「どーせあたしは半人間です」

「半人間、か。あの時お前、本気で怒ってたよな。目が据わってたぞ」

「ほんと、コイツどーしてやろうかって思ってたわ」

 楽しそうに笑い声をあげるジン。

 あたしも一緒になって笑った。