銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 神殿から遠く離れて、体調も思わしくないんだろう。

 モネグロスは何も言わないけど、たぶんかなり具合が悪いはずだ。

 早くアグアさんを救出しなければ、自分はもう間に合わないかもしれない。でも、その自分自身が何もできない。

 気ばかり焦って、もどかしくて、情けなくて仕方ないんだろう。

 そんなモネグロスが気の毒で、あたしは彼の肩に手をかけて、精いっぱい慰めた。

「そんな風に考えないで。あんたは、自分の命も顧みずにここまで辿り着いたじゃないの」

「それはそうですが……」

「自分ができる精一杯の事を、あんたはちゃんとやってるわ」

 そう言いながら黄金に輝く髪を優しく撫でると、モネグロスは悲しげな表情であたしの目を見た。

「アグアさん、長い幽閉生活できっと体力が落ちてるわ。だから、城から出てすぐにあんたに会えたら、ものすごく喜んで元気が出ると思うの」

「……」

「彼女を城から出すだけが目的じゃないもの。無事に元気で砂漠に帰らなきゃ。その目的達成のために、あんたには無事でいてもらわなきゃ」

「雫……ありがとう」

 モネグロスの両目が涙で潤み、グスグスと鼻を啜り始める。

 あたしはグリグリと金髪を撫で、自分の肩に押し当てた。

 モネグロスを見てると、なんだか弟を思い出して切なくなってくる。

 昔、弟が学校で友達とケンカして泣いて帰ってきたっけ。その時もこうやって慰めたわ。

 ……なんだかホームシックになっちゃいそうよ。

 あたしの婚約破棄の一件で、あの子は何も言わなかったけど、いつも黙って心配そうにあたしを陰から見ていた。

 何て声を掛ければいいのか、思いあぐねていたんだろうな。

 今頃どうしてるだろう。あの子……。

 あたしも涙目になって、モネグロスの頭をギュッと抱きしめた。