銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 信じた。あたしは彼の言葉を信じたわ。

 何の補償も担保も無い、『言葉』なんて不確かなものを、なんの疑いも無く。

 ううん、言葉だけじゃない。

 ダイヤモンドの婚約指輪。新婚旅行のパンフレット。結納品の7品目セット。

 これでもかってくらい、真実の永遠の愛の証をたくさん贈られたわ。

 信じた。信じたわ。全て無条件に信じていた。

 そして……

 あたしは、その全てを失った。

 真実も永遠も無いんだって、思い知った。

 世界には、何ひとつ確証なんか無いんだって。

 どんなに目の前に証を捧げられても、それは全部、儚い幻想でしかないって。

 思い知らされ、絶望に突き落とされ、全てを恨んで逃げ出して……逃げた先に、この世界があった。

 そして今、再び満天の星空の下で、再び、あの時と同じ言葉を聞く。

『この世界に来てくれて良かった』

『特別な人間』

『出会えた事を感謝する』

 あの時とは、違う味の涙で潤む星空と、胸が掻き毟られるような痛み。

 運命ってものが本当に存在するなら、ずいぶんとヘソ曲がりで厄介なものだと思う。

 思うけど、あたしは……あたしは、ひょっとしたら、やり直せるのかもしれない。