銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 辺りは暗く、静かで、何も聞こえない。

 闇と、無音。舞う炎。

 ただ……ただ、ジンの囁きだけが……。

「人間は好きじゃない。今も偏見がある。でも……」

 あたしは、火の人形の踊りから視線を離さない。離せない。

「オレはお前と出会えて良かった。感謝している」

 その囁く言葉だけが……

 あたしの胸に突き刺さり……

 あたしを、苦しめる。

 苦しめるのよ……。

 あたしはジンに何の言葉も返さず、ふたりの間にしばらく沈黙の時間が流れる。

 火の人形はひたすら踊り続け、あたし達は黙ってそれを眺め続けるだけ。

 やがて、ジンが沈黙を破るように静かに話しかけてきた。

「さあ、もう休もう。雫も疲れたろう?」
「あたし……」

 あたしは夜空を見上げた。

「もう少し、ここにいたい」
「……」
「こんなすごい星空、初めてよ。もう少しだけここにいるわ」
「そうか」