銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 人間とは異なる質感のジンの肌色が火に照らされて、とても幻想的だ。

 緩やかに揺れる銀の髪と、あたしを真っ直ぐに見つめ続ける銀の瞳の美しさに、言葉もない。

「お前は特別な人間だ。雫」

―― トクン……。

 パチパチと火の爆ぜる音に混じって聞こえたジンの囁き声が、あたしの胸を泡立たせた。

 あたしが特別な人間? 特別な?

「お前にとってこの世界なんて、本当はすぐにでも立ち去りたい場所だろう」

 ジンが焚き火に向かい、ふぅっと軽く息を吹きかける。

 すると炎がサアァッと音を立てて、瞬時に人型に形を変えた。

 目を見張るあたしの前で、火の人形が丁寧に一礼し、軽やかに踊り始める。

 揺れる長い炎の髪。軽やかにステップを踏む炎の脚。滑らかに動く炎の腕。流れるようにひらめく炎のドレス。

 まるで生きているような見事なダンスに、声も無く感嘆して見入ってしまうあたしに、ジンが囁くように語り掛けてきた。

「でもオレは感謝している。お前がこの世界に来てくれた事に」