銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 目の前にジンが舞い降りた。

 銀の髪を巻き上げている風が、焚き火で火照ったあたしの頬を優しく撫でる。

「とりあえず、周囲に危険なものは無さそうだぞ」

「そう、良かった。見回りお疲れ様」

「いや、たいして疲れちゃいないさ」

 ジンがあたしの隣に並んで座り込んだ。

 そして焚き火の様子をひと目見て、「火の精霊と話したのか?」と聞いてきた。

「すごい。なんで分かるの?」

「それぐらい、この火を見れば一目瞭然だ」

「ふーん。あたしには、何となくしか変化が分からないけど。これが生粋の精霊と、半分精霊の差かしらね?」

「あいつ、喜んでたろう?」

「おかげでヤケドしちゃったわ」

 ジンは声を上げて笑い、悪気はないんだ許してやれよと言った。

「生真面目な火の精霊達の中でも、あいつは特に一本気なんだ」

「分かるわ。とにかく正直者よね」

「裏表のない奴だ。よろしく頼む」

「もちろんよ。こちらこそだわ」

「……雫」

「なに?」

「ありがとう」

 ジンが優しい声で感謝の言葉を囁いた。

 澄んだ銀の瞳が、あたしをじっと見つめている。

「火の精霊と土の精霊が仲間になったのは、お前のお陰だ。お前の力が、少しずつ事態を好転させていく。オレにできない事を、お前が叶えていく」

「ジン……」

「お前は、不思議な人間だな」