銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 全身全霊、心の奥までも燃え上がらせて、行くべき道を突き進む。

 それでこの身が燃え尽きようとも、本望。

 火の誇りを失ってしまっては、火の名を冠して生きては行けぬ。

「我は誇り高き火なり」

「火の精霊……」

「皆、きっと理解してくれる。……雫よ」

「なに?」

「お前に感謝を捧げる」

「え? か、感謝? あたしに?」

 思いもかけないその単語に、面食らってしまった。

 火の精霊ったら、感極まって忘れちゃったのかしら。

 あたし、さっきあんたの事を殺しかけた張本人なんだけど。

「お前の言葉が、我を目覚めさせり。人間との軋轢に苦しむ世界で、異なる世界の人間であるお前の言葉が、我の心と行動を変えさせた」

「あ、あたしは別に何も……」

「お前の来訪には意味がある。きっと」

 そういえばモネグロスも、同じ事を言っていた。

 あたしがこの世界に来た事は偶然じゃない。必然だって。

 でも、あたしは……。

 あたしは、そんなご大層な理由でここへ来たわけじゃないの。

 男に振られて、全てに嫌気が差して、死のうとしたのよ。

 あの世界の全てに『もうどうでもいい』って宣言して、放り投げたの。

 そう……。あたしこそ、逃げたのよ。