銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「我はそう思慮せり。だが、その考えを引っくり返された」
「誰に?」
「お前に」
「あたし?」

 火の精霊は深く頷いた。

「お前は言った。『自分がした事ならば、それは自分の意思である』と。言い訳はできぬと、そう言った」


 ……お前の……

 お前の、その言葉を聞いた時、我は胸が抉られるような痛みと羞恥を覚えた。

 我は、言い訳ばかりだ。

 アグアの受ける処遇を、見て見ぬ振りをした事。

 風の精霊と水の精霊を見捨てた事。

 長の命を受け、ここへ来た事。

 それらは全て我がした事なのに、『仕方がない、仕方がない』ばかりを言い募っていた。

 風の精霊や水の精霊と共に、砂漠へと旅立つ事も、長の命を拒否する事も選べたのに、どちらも我は選ばなかった。

 ならばそれは全て、我の意思と責任になってしまうのだ。

 仲間のためや、長の命だからと理由を付けて、仕方がないと逃げたとしても。

 本当は、自分は薄情でも卑怯者でもないのだと、自分にいくら言い聞かせても、そんな言い訳は通用せぬ。

 そもそも、誰に対しての言い訳か?

 長に? 仲間の精霊達に?

 いいや。

 自分自身の後ろめたさに。

『仕方がない』『我のせいではない』『我に責任は無い』

 そう言って、コソコソ背中を向けて隠れていた自分自身の心への言い訳にほかならない。