「知ってる! だから止めるんだ!」

「なにが『だから』なのよ!?」

「お前は、半分勘違いしてんだよ!」

「だから、どこがどう勘違いなのよ!?」

「説明してる時間がないんだ!」

「また後回しなの!?」

「お前が火の精霊を殺したら、もう取り返しがつかないんだよ! 永遠に!」

 ……火の精霊を殺す? あたしが、この手で殺す?

 突如として突きつけられたその事実の重みに、あたしの頭は、雨とは違う冷たさを感じた。

 高揚感で満ちていた心が、ふぅっと涼しい風に吹かれたように、少しだけ冷静さを取り戻す。

 命を奪う。それは確かに重大な、恐ろしい事実。

 そんな恐ろしい事をあたしが?

「で、でも、じゃあ火の精霊はどうなのよ? あんな事をしておいて、このまま許されてもいいって言うの?」

「だからお前が命を奪うのか? 土の精霊と神の船が死んだら、お前が火の精霊を殺して当然なのか?」

「それは……」

「答えろ。お前の世界では、それが罪と罰の道理なのか?」

 あたしは、また言葉に詰まってしまった。

 罪とか、罰とか、それは、とてもじゃないけど単純明快に答えられるものじゃないわよ。

 立場とか、事情とか、様々なものが複雑に絡み合って、価値観っていう正体不明の化け物みたいなものに、大きく支配されるものだから。

 だから、何が罪であって何が罰なのか、それを簡単には断じることなどできはしない……。