銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 火の精霊の体がボウッと霞んで、水の精霊が逝った時のように、全身が徐々に透けていく。

 滝のような雨は、そんな事にはお構い無しに、火の精霊に襲い掛かり続ける。

 ……もっともっと! この許されざる者への裁きを、もっと!

 雨に叩かれ、もう地面が透けて見えるほど朧になった体を眺めながら、あたしは心の中で激しく叫ぶ。

 抑えきれない憎しみと、火の精霊への更なる酷い仕打ちを求めて。

 止まぬ水の勢いに、呼吸もままならない。でも、そんな事まったく気にならない。

 別世界のようになってしまった水の空間の中、あたしの心はただひとつ。

 さあ、もっと罰を! 当然の報いを!

 愚かな罪人に、正義の裁きを!!

 こいつは、それだけの事をしたんだから!

 人を傷つけ苦しめるものは、それ相応の対価を支払わねばならないのよ!

 その望みは今、目の前で叶えられていく。

 ほとんど消えかかっている火の精霊の姿を眺めながら、あたしの胸は高揚感に満たされる。

 この快感! そして復讐心! 満足感!

 ざまあみろ! 人をないがしろにして、苦しめる者は最後にはこうなるんだ!

「思い知ったか!!」

 あたしは唇を歪め、声も無く笑った。

 ざまあみろ! ざまあみろ! ざまあ……

「雫やめろ! なにやってんだお前!?」