銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 ぽつり……ポツリ……小さな音をたてて、天から落ち始める雨の雫たち。

 烈火の楽園と化す空間を前に、儚く無力なそれは……。

―― ザアァァァ―――。

 やがて徒党を組み、勢いを増し、無数の水となって……。

―― ドオオオオッッ!!

 見る間に大地を殴りつける、膨大な水の槍と化した。

「火の精霊! あたしはあんたを、絶対許さない!」

 箍が外れたような驚愕のスコールは、まさに天から叩きつけられる滝の槍雨。

 熱に浮かされていた空気が、湿気と水の匂いで充満する。

 あたしは一瞬で頭からずぶ濡れになり、ベットリと濡れた髪が顔に貼り付いて、水を限界まで吸った制服がズシリと重くなった。

 突然の大雨に全身を殴られて痛むのか、モネグロスが顔を歪めた。

 あまりの雨量で視界がほとんど利かないけれど、視線の向こうにいるはずの火の精霊を、しとど流れ落ちる水に濡れた般若のような形相で、あたしは睨み続けていた。

 地を覆う炎の楽園はみるみる勢いを鈍らせ、輝く青白い炎が、文字通り青息吐息となっていく。

 熱気は湿気となり、炎が水に飲み込まれていく。

「さあ、思い知れ!!」

 般若の唇の片端が、クィっと上にあがった。