銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 おそらく、水の精霊の力があるからこうして無事でいられるんだろう。

 もしこの場に生身の人間のままでいたなら……。

「グガアァァ――――ッ!」

「やかましい――――っ!」

 恐怖心を打ち消すように、あたしも叫び返す。

 ま、負けない! 負けられない!
 自分で自分の火の始末もできないような奴なんかに、負けてられないのよ!

「危ない! 雫!!」

 モネグロスの叫び声と同時に、空から巨大な青白い炎の塊が、あたし目掛けて落下してきた。

「……!?」

 モネグロスが、飛び掛るようにしてあたしの身を庇ってくれた。

 あたしの体全体を、自分の衣装で包み込むようにして丸く覆い被さる。

 そして周囲は灼熱と、燃え盛る音と、全ての焼ける臭いが入り混じり、猛り狂った。

 嵐のような激しい空間と時間が続いて、何が起こっているのかまるで分からず、モネグロスの体に守られながら、声にならない悲鳴を上げ続けた。

 やがて、グラリとモネグロスの体があたしの上から離れる。

「モネグロス!!」

 倒れて身動きしないモネグロスの体を揺さぶりながら、あたしは目の前の光景にゾッとした。

 あたし達を中心に、地面が丸く焼け爛れている。

 真っ黒に……ううん、暗黒に。

 草も、土も完全に焼き尽くされ、すべてが墨汁のように、どす黒く染まってしまっていた。

「モネグロス! しっかりして!」

「大事、ありません。衰えても私は砂漠の神。灼熱などに怯みはしませんよ……」