銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしは両手で強くかしわ手を打ち、必死で祈った。

 水よ! どうか力を貸して! このままじゃジンが殺されてしまう!!

 一心に祈り願う心に応えるように、徐々に体中の細胞が呼応して、あたしの中を流れる全ての水が奮い立つ。

―― ザアアァァァ――!

 突然、湖面がざわめきだしたと思うや、湖水の表面が大きく一部分、ぐうんと凹む。

 見えない巨大な手の平が、水をすくって撒き散らすように、大量の水が頭上に降り注いだ。

 あたり一面の炎に狙いを定めるように、勢い良く水が降り掛かる。

 やったわ! これで火が消せる!

―― ジュウゥゥ……。

「……えっ!?」

 大量の水が、炎に触れた途端に蒸発してしまった。

「ガアアアァァ――!」

 火の精霊が猛り狂い、真紅の髪を振り乱して咆哮する。炎の色は青白く変色して、もはや光り輝くようだ。

 完全に常軌を逸してしまっている! 半人間のあたしの水の力程度じゃ、とても太刀打ちできない!

「ガアァァ! ガアァァ―!!」

 狂乱と咆哮が鳴り響く。