銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 たて続けに消し損ねた炎が、たちまちジンの足元の炎を燃え広がらせる。

 揺らめく赤い火がじわじわと草を燃やし、勢いを増していく。

 さっきから周囲に蓄積された熱と風の息苦しさに、あたしは咳き込んだ。

「雫! モネグロスを連れて逃げろ!」

「そ、そんな事できるわけないでしょ! 逃げるならあんたも一緒に……!」

「よせ! 来るな!!」

―― ゴオオォォォ!

 ジンを取り囲む炎が円を描き、グルグルとトグロを巻くヘビのように炎の柱と化す。

 皮膚を焼くあまりの熱さに耐えきれず、あたしはとっさに後ろに飛び退いた。

 炎の円柱に囚われたジンの姿はまったく見えず、中から叫ぶ声だけが聞こえた。

「雫! モネグロスを連れて逃げるんだ!」

「だから、そんな事できないって言ってるでしょ!」

 見えないジンに向かって叫び返す。

 炎の柱はますます高く燃え上がり、そびえる塔のようだ。

「頼む! お前しかいないんだ! モネグロスを任せられるのは……」

「ジン!? ジンどうしたの!?」

「……」

「しっかりして! お願い返事をして!」

 ジンの声は聞こえない。炎の色はさらに薄く、黄色から白色化していく。

 炎の柱の中は、いったいどれほどの温度なのか。