銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「やるのか? 火の精霊」

「言わずと知れたこと」

「できるなら避けたいがな。仲間同士の戦いは」

「否。仲間にあらず。お前は……」

 カッと目を剥いた火の精霊の全身が、赤い炎に包まれた。

「ただの離反者なり!」

 火の精霊の炎が、轟く球体となってジンに襲い掛かってくる。

 ジンの髪と服が一気に風に膨らんで、大きな炎の球が、風の唸りと共に勢い良く吹き消される。

 次々と飛来してくる紅蓮の球。でもそれを難なく消し去る強烈な風。

 爆音の炎と、轟音の風の攻防が続く。

 すごい! ジンの風にかかれば炎の球なんて、扇風機の前のロウソクの火よ!

 いくらやっても無駄よ、勝ったも同然!

 グッとこぶしを握って勝利を確信するあたしの肩に、モネグロスが手を置いた。

「雫、もっと下がりましょう。ここにいては危険です」

「大丈夫よ! 勝利は目前じゃないの!」

「いいえ、雫」

 モネグロスの表情は真剣だった。厳しい目付きでふたりの様子を見ている。

「ジンの方が不利なのです」

「え!?」

 消されても消されても、次から次へとジンへ襲い掛かる炎は、まさに息つく暇も無い。

 ジンも負けずに、全ての炎を疾風で打ち消しているけれど……。