銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 そ、その屁理屈が返ってきたか!

 基本的にこいつ、あたしが言った意味をまるっきり理解してないわね! それが腰ぎんちゃくだっつーのよ!

「長の命は絶対。ゆえに、我はなんとしてもお前を連れて行く」

「おい待てよ」

 再びこちらに向かって歩き出した火の精霊を、ジンが制した。

「今言ったよな? お互い関知せずと」

「お前は好きにすべし。だが女は別」

「悪いが、別じゃないんだよ」

「お前は人間達を放棄した。なら、その人間の女も手放すべし」

「雫は違う。オレは雫を放さない」

―― ドキン・・・。

 ジンのその言葉に、なぜかあたしの心臓が強く鼓動を打った。

「雫は、他の人間達とは違う。オレにとって、雫だけは特別なんだ」

 心臓がまた強く鼓動を打って、あたしは、そんな自分の心の動きに密かに戸惑った。

「その希望、こちらは受け入れられず」

「そっちの都合なんか知ったことじゃないんだよ」

「なぜ、そこまでその女を庇うのか?」

 感情の篭もらない火の精霊の声に、少しだけ不思議そうな色が混じる。

「そのような、男に体を売る商売の女などを」

「ちょっと!? 誰が誰に体を売ってるってえ!?」

 なんであたしが、そんな商売してる事になるのよ!?

 あたしの仕事はね、れっきとした営業一課の事務係です! どこでどう間違えば、そうなるのよ!?