銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 仲間の顔を見て、里心がついちゃったのかしら!?

 もう! これだから男ってのは! いらない時に急にセンチメンタルになるから厄介なのよ!

「モネグロス、ジンに何か言ってよ!」

 焦るあたしとは対照的に、モネグロスは黙って事の成り行きを見守っているだけだ。

 火の精霊は、これで話は決まったとばかりに、こっちに向かって歩いてくる。

「ならば、その人間の女を連れて、早々に城へ行くべし」

 あたしはギクリと後ずさった。

 狂王の所へ連れて行かれるなんて絶対嫌よ! 絶対、ろくでもない事になるに決まってる!

 そういう暴君は女好きって相場が決まってるし、異世界の女って物珍しさで、ハーレムとかに突っ込まれたら一生出られないかも。

 ヘタすりゃ生き血とか啜られかねないわ!

「おいおい火の精霊よ、勝手に先走るなよ」

 飄々としたジンの言葉に、火の精霊の足がピタリと止まった。

「……なんと?」

「勘違いしてもらっちゃ困る。オレは、お前達の考えが分かったと言っただけだ。それに対して賛同するとはひと言も言ってないぜ?」

 ジンは腕組みしながら、すっとぼけたようにそんな事を言い出した。

「お前達は、お前達で好きに生きろ。そっちの邪魔はしないと約束する。だから……」

 一転して、とぼけた声のトーンが低くなる。

「オレの邪魔も一切するな。分かったな?」