銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「愚かなり、人間の女よ。しょせん事情を知らぬ、異世界の者の浅知恵なり」

 …………。

 思いっきりバカにされてしまった。

 しかも無表情、かつ極めて冷静にバカにされたわ。

 怖いけど腹立つ奴ね、コイツ!

「そうか? オレはなかなか前向きで、良い意見だと思うけどな?」

「風の精霊よ、王と人間達を侮るなかれ」

「侮る?」

「偉大だった神達の現状を見よ。人間は、その気になれば我々精霊や世界を、破壊できる力を持っている」

 ジンが不機嫌そうに腕を組んで黙り込んだ。

 きっとこんな会話が、他の精霊達とも何度も繰り返されたんだろう。

 やっぱり精霊達は、長を筆頭に全員が人間を恐れているのね。

 あっちの世界でも、人間による自然破壊のせいで地球はけっこう大変な事になっちゃってるんだから、こっちの世界の精霊達が抱いている恐怖は、決して非現実的な事じゃない。

 滅ぼされるぐらいなら服従っていう選択は、臆病かもしれないけれど、選択肢のひとつではあるのだろうから。

「我ら精霊は、長の命に従い、人間達に寄り添って生きるべし」

「うんそうか。良く分かった」

 アッサリ頷いて同意したジンの言葉に、あたしは目を剥いた。

 ……え!? わ、分かっちゃったの!?

 ちょ、そ、そりゃ、選択肢のひとつではあるかも……とは確かに思ったけど!

 それにしても、主義主張の翻意が早過ぎない? もう少し考えてよ!

 あんたがそっちの側につくって事は、モネグロスとアグアさんを見捨てる事になるのよ!?