幸いなことに二人はまだ、わたしに気がついていないらしい。
わたしは顔をそっと下に向けた。
わたしに背を向けて座っている女の子の正面に座っている幸宏に、みつからないように。
冬実はまだ気づいてないみたいで、黙々と英語の問題を解いている。
わたしがまだひとくちも手をつけていない焼きプリンを、冬実はもう平らげていて、空の器が隅に追いやられていた。
問題に集中しようとしたけどなかなか頭に入ってこず、つい二人の会話に耳を傾けてしまう。
ちらりと目だけを二人に向けると、幸宏は女の子の手に自分の手を重ねていた。
わたしにも、それを幸宏はよくしてくれる。
じっとその手を見ていると、女の子の指が幸宏の指輪に少しずつ絡んでいった。
「琴乃は、頭がいいからさー」
冬実が気づかないことを願う。
「便利なんだよ、一緒にいると」
「うわ、入試終わるまで利用する気?悪い男ねー」
女の子がけらけらと笑って、長くて綺麗な髪が揺れた。



