アゴに両手をあててみたわたしに、冬実がフォークを握ったまま身を乗り出してにっと笑った。
「今度の治療、さっき買った服着て行きなよ」
「え…」
さっき、冬実に選んでもらって買ったのは黒のブラウスとワインレッドのカーディガン。
短いスカートとか履かなければ、病院にも着ていけそうだけど…。
「あとね、唇のケアはしっかりね。ラップパックしていくといいよ、リップクリームだけでぷるぷるつやつやになるから!」
冬実は最近やたらわたしに美容情報を教えてくれる。
美容にうといわたしにはとってもいい情報ばかりだけど、勧め方が化粧品の路上販売の女の子みたいだ。
思わず身を引くと、冬実は不機嫌そうな顔になった。
「なんでそういう態度?わたしはねぇ、琴乃のために教えてあげてるのよ」
「う、うん。とっても役にたってるよ。ありがとう」
これは本当の気持ちなので素直にいうと、すぐに冬実は機嫌を直した。
結構単純なのである。



