恋の扉をこじあけろ


「今日からしばらく歯を磨いていきます」


それを聞いてまず思い浮かべたのは歯ブラシだった。

いつも歯を磨くときに使う、あの。


でも違ったらしい。

先生は倒しますね、と言って診察台をゆっくり倒した。


そういえば、診察台を倒されるのは初めてだ。

横になったわたしの顔の正面で、先生が照明をつけた。

少し眩しい光に、わたしは目を細めた。


なんだか緊張する。


「はい、口開けて」


あんまり開かない口に、先生は器用に機械をいれて歯を磨きはじめた。


そしてわたしは困り果てた。



目、瞑ったほうがいいんだったっけ?


わけがわからなくなって、わたしは目を開けたままになっていた。


小さいときから目を開けてないと不安だった。


でも、瞑らないとおかしいような気もする。