「はい、的井です」
「あ、先生」
だから的井先生の声が聞こえてきたときも、平常心でいることができた。
「どうしたの?」
何て言うか迷った挙句、決心した。
もうやけくそだ。
「スプリント壊しました」
「え?」
ちょっとの間のあと、電話の向こうで笑いだした。
うう、やっぱり恥ずかしい…。
「なんで?どうやって壊れるの?すごいな牧原さんは」
耳元で笑われると、困る。
的井先生の柔らかな声がわたしの鼓膜を刺激してくる。
「しょうがないな。ええと、次の予約はいつだっけ。二週間後か」
どうやら手元にパソコンがあるようで、カチカチという音がかすかに聞こえた。
予約状況を確認しているらしい。



