先生はお弁当箱の中から卵焼きをひとつとり、ぱくっと食べた。
緊張しながら先生を見つめていると、わたしの視線に気づいた先生は微笑んだ。
「美味い」
もうなんて表現したらいいかわからないくらい嬉しかった。
わたしが今まで頑張ってきたのは、この日のためだったのかもしれない。
ぽわんと頬があたたかくなって、また涙がこみあげてきた。だけどこの涙は、さっきのとは意味が違う。
「…祐助さん」
的井先生が驚いた顔をした。わたしはふふっと笑う。
「大好きです」
何回言っても足りないくらいに。
優しい風が草花を揺らしていった。
風に踊るわたしの髪を、的井先生がふわりと耳元にかけた。
いつものように、繊細な手つきで。



