「逃げたんだ。俺は臆病者なんだよ。牧原さんが思ってるような男じゃない」
的井先生の目が、寂しそうで悲しそうで、わたしが苦しくなった。
先生の手首を握ったままの手に、力を入れた。
嫌だよ。
やめて。
そんな顔をしないで。
「わたしが先生のことをどう思っているかなんて知らないくせに、勝手に逃げ出さないでください!」
我ながら偉そうだ。
逃げ続けてきたわたしなんかが言えることじゃない。
だけど、わたしの本当の気持ちを先生に知ってほしい。
「話を聞いたとき、少しショックでした…。先生はわたしを置いて行ったんだって。わたしのことより、自分のほうが大事なんだって。でも」
「……」



