「琴乃?」 幸宏の声にはっと我に返ると同時に、ぞっとした。 幸宏の心配そうな目と目があい、泣きそうになった。 「お願い…、今はほっといて」 踵を返して、幸宏のもとから急いで逃げ出した。 幸宏の、わたしを呼ぶ声が遠ざかっていく。 夜の冷たい風が、走るわたしの頬を掠めていった。 息を切らしながら走って走って、なんとか駅まで辿りつき、電車に飛び乗った。 少しでも早く幸宏から離れたくて。