「わたしもコドモだったよ。幸宏から逃げ続けてきたのは事実だもん。逃げてるつもりで、引き摺ってたしね、最近まで」
「最近までかよ」
幸宏は残念そうに眉を下げた。
「琴乃がフリーだったら、ヨリ戻して貰おうかと思ったのに」
「虫がよすぎるよ、ばか」
笑いながらパスタをフォークに巻きつけていると、顔をあげた瞬間に幸宏の真剣な目に捕まった。
「俺は真剣なんだけどな」
幸宏のまっすぐな目に少し胸が苦しくなった。
何をいまさら。
本当に虫が良いんだから。
だけど、幸宏があんまり真剣な顔をするから、わたしは俯いてしまった。
「ごめん…わたしは…」
「好きなやつがいるのか?」
「えっ…」
「もしかして、兄貴?」
驚いて、フォークを落としそうになった。
「知ってたの?わたしと松居先生が知り合いだって」



