わたしが髪を伸ばしていたのは、幸宏の影に捕われていたから。
髪を切ったのはわたしなりのけじめだった。
だけどそんなことは的井先生には言えない。
「髪が短くてもいいかなって思ったから…」
「すごく似合ってるよ。可愛い」
死 ん じ ゃ い そ う 。
ここにタオルがあったら引きちぎってしまう。
先生、もしかしてわたしのこと好きなんじゃないだろうか。
違うの?
ねえ?
二度目の『可愛い』に内心悶えながら、思いっ切り浮かれまくる。
こんなに嬉しいことはない。
今日のこの出来事を胸に、わたしは次に会えるまでの一か月を乗り切れます。
「あ、ありがとうございます。嬉しいです…」
そう言うのがやっとで、あとは俯くしかなかった。
胸の鼓動が先生に聞こえてしまうのではないかと、体を小さくした。



